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『碁の教わり方』小林光一九段(中山典之五段・記)
  • NAME : 寒月 DATE : 2023/07/12 HIT : 3533
 明治の昔、犬養木堂は本因坊秀栄について碁を学びました。ところが秀栄先生、いつもビシビシ負かすばかりで、決して負けてくれません。あるとき木堂翁のいわくに、
「オイ、本因坊。ワシはどうでもいいが、誰でも彼でもこう無愛想に負かしてばかりいては、稽古に来る者が無くなるぞ」
「エエ、方々から忠告もあって、私も初めのうちは勝たぬように勉めているのですが、こんな難しいことはない。途中で面倒くさくなってツイ勝ってしまうのです」
 それでも秀栄先生、お客さんの手ごたえを見ていて、「少しご上達のようだから、一目減らしましょう」と、置き石を減らしてくれたそうです。
 碁を習う以上は、ここが肝心なところです。まかり間違っても生徒の方から、「大分研究したからモウ負けません。一目減らして下さい」などといってはいけません。そんなに自信があったら、たくさん置いて先生をこっぴどくいじめるべきです。たぶん先生の方も、恐れ入ったといって、二、三目も減らしてくれると思うのです。
 あるとき、九段の先生に三子で稽古しているお客さまが、四段の棋士に四子置いて教わりました。四戦四勝のつもりが案に相違して四連敗。そこで客人のいわく、「どうせ勝てないのが分かりましたから」といって、五局目は三子置いたものです。お客さんは、この瞬間に、また一目下達しました。
『小林流 必勝置碁 五子局』(昭和55年)

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