【準決勝】小松英樹─井山裕太 |
第1回大和証券杯ネット囲碁グランドチャンピオン戦2回戦
●井山 裕太七段
○小松 英樹九段
日時 : 2008.5.17
結果 : 151手完、黒中押し勝ち
総譜(1〜151)
名人リーグでも絶好調、新世代のホープ・井山七段がグランドチャンピオン戦でも大活躍している。この準決勝では、ベテラン・小松英樹九段をほぼ完勝の内容で討ち取って、決勝戦へ名乗りをあげた。
【三村解説】
この譜は井山七段の好局、いや、それどころか井山七段の「完璧な一局」だったかもしれません。
小松九段がとくにミスをしたわけではないのに、意外な好手を連発した井山七段があっという間に優勢を築きました。
その発端となった場面から見ていきましょう。
局面図1
黒▲の変則カカリに、白1ツケは小松九段らしい力強い一着です。白1で3と受け、黒4なら平凡な進行。ですが、こうやすやすと左辺を割られてはおもしろくありません。
黒2ハネには白3と引く。一瞬これがつらいので、本来、白1は打ちにくい手なんですよ。しかし、黒4ヒラキを待って白5ハサミツケが先の白1と連動した構想でした。白7、9と黒を分断して攻めあげようというのですね。
黒10、12の進出、白13スベリはこんなもの。
続いて井山七段が放った数手には、たいへん驚かされました。
局面図2
黒1がなんともすごい。
この戻りは、一見、必要ありません。白から1、黒A、白Bと切られても黒Cでシチョウですからね。切られる恐れがないところ・守る必要がないところを、あえて黒1と戻ったんです。
さらに、黒3、5のワリツギがまたすごい。白6ツギを待って、黒7からグイグイ下辺を塗りつけます。
白18は省けません。黒から18の動き出しがきついですからね。
さあ、黒19ハサミツケが仕上げの手筋です。黒21までの厚みがすばらしく、井山七段が一本も二本も取ったワカレ。右上一帯の模様とも呼応して、見るからに黒が打ちやすいでしょう。
黒1から5までのように、一歩一歩形を決める手は浮かびにくいものですが、この局面ではぴったりでした。
局面図3
前図からかなり進んでいます。
広大な黒模様に飛び込んでいった上辺の白を、井山七段は見事にしとめます。
白1カカエには黒2と切って、白を分断。白5コスミツケに対する黒6のアテ込みは好手。この一子を犠打に、黒12までタネ石を無事助け出し、白はいよいよ苦しい。
白13切りには黒14から16と応じて、攻めあいは恐れません。上辺左方の白を取りきって、黒の勝勢です。
変化図
局面図3の白25で、本図の白1からの攻め合いは黒の勝ち。黒8まで示しておきますのでご確認ください。
白3の前に4アテ、黒6、それから白3と戻って、8の地点のコウを粘る攻め合いは、気が遠くなるほど不利なヨセコウにしかなりません。
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