【1回戦】依田紀基─林漢傑 |
第1回大和証券杯ネット囲碁グランドチャンピオン戦1回戦
●林 漢傑六段
○依田 紀基九段
日時 : 2008.3.22
結果 : 281手完、白4目半勝ち
総譜(1〜281)
グランドチャンピオン戦開幕戦は、注目の好カード。無冠ながらも変わらず日本碁界のエースと目される依田紀基九段と、若手ホープ・林漢傑六段がぶつかった。
対局前の依田九段は「ネット碁は好きだからね。ファンの人に楽しんでもらえるよう、おもしろい碁を打ちたいと思うよ」と意欲十分の様子。その宣言どおり、依田九段が明るさを見せつけて快勝。解説担当の三村智保九段も「白の完勝でしたね」という、依田ファンならずとも拍手喝采の好局となった。
みなさん、こんにちは。三村智保です。
そうそうたる顔ぶれがそろったグランドチャンピオン戦が始まりました。みなさんもそうであるように、わたしにとっても楽しみな対局ばかりです。
開幕の一局となった依田―林戦のポイントを振り返っていきましょう。
局面図1
左下で見たことのないワカレができあがります。黒1から7まではポピュラーな形。続いて白8のアテが珍しい(白Aならよくある定石になるのですが)。黒9では、Aツギがよくある応手。白10、黒Bまでの形なら互角でしょう。ところが――。
変化図1
黒2ツギには白3、5とがんばられてしまいます。黒6、8とカカえてシチョウに取れればよいのですが、ちょうど白△があたってしまいます。それで林六段は局面図1の黒9を選んだのです。
局面図2
黒1ヒラキはたしかに大場なのですが、この局面では右下の厚みを活かすべく黒4トビが急がれました。
というのも、白2ハネが好手だったから。次に白3のアテを食ってはたまらないので、黒3・5と押すよりしかたない。ですが、白4、6とノビられて、右下の厚みが自然に消されてしまいました。依田九段、じつにうまいですね。
白14まで、白が打ちやすそうな形勢です。
局面図3
依田九段といえば捨石に定評があります。手順は長くなりますが、依田九段の明るい大局観を鑑賞していただきましょう。
白1を利かし、3カタツキからまず白△を捨てに行きました。上辺の黒地を制限し、白15と大場の手止まりに回れば十分という判断です。
黒20の一撃にどうするのかと見ていると、再び白21からシッポを処分しにいきました。黒22には白23から形を決めて、白33まで中央を安定させれば白が勝勢なんです。
え? 上辺が大きく見える? じつはわたしも中継を見ているときは黒34まで確定した黒地が大きく、形勢はまだ難しいのかと思っていたんです。ところがよくよく数えてみると、はっきり白に残っているんですね。
以下、中・終盤では何事も起こらずに白4目半勝ち。依田九段の判断力が光りました。
振り返って、林六段としては黒12で20と急所を衝くよりなかったようです。黒12と受けさせていない今の段階では、さすがの依田九段といえど上辺白は捨てにくいはず。白23なら黒24、白27、黒29と食いついて、なんとか勝負に持ち込むしかなかったでしょう。
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