決勝トーナメント決勝三番勝負第2局 依田紀基−王銘エン |
第2回大和証券杯ネット囲碁オープン決勝トーナメント決勝三番勝負第2局
●王銘エン九段
○依田紀基九段
日時 :2007.03.31
結果 :265手完、黒9目半勝ち
今回の決勝は依田紀基九段と王銘エン九段の顔合わせ。ベテラン同士の顔合わせとなりました。こういうネット碁は若手の方が有利そうですが、どうもそういう単純なものではないようです。
わたしは準決勝戦の解説で、「ベテランがおもしろい」といいました。そのとおり、決勝戦は2局とも両者の持ち味が良く出たおもしろい碁でしたね。だいたい、早碁の方が、打ち手の本質・持ち味がよりストレートに盤上にあらわれるものなんですよ。そして、今回の決勝では、どちらかといえばメイエンさんの個性がより強く発揮されていたように思います。それがメイエンさんの二連勝という結果につながりました。
では、決勝局となった第2局を見ていきましょう。
局面図1
右下でさっそく黒番のメイエンさんが厚みを取り、依田さんがしっかり実利を確保。棋風どおりの進行といえるでしょう。メイエンさんは戦いを含んだ中央志向。依田さんは碁が明るくて落ちついることが持ち味ですから。
さあ、黒2に白3とハサんで早くも見かけない形です。黒4ツケに対して、白5のヒキが冷静でした。
変化図1
前図白5で、本図の白1オサエなら、当然黒2の切り違いが来ます。この変化がいろいろわずらわしい。白3、5からいきおいは白7のオサエ込みでしょう。白13までで一段落ですが、この場合、白△の位置がなんとも微妙。左下の黒に迫っているとも見えますし、厚みに近づきすぎているともいえる。評価の難しいところですが、左下の格好ができるときには、白△がaにある方が普通ですからね。依田九段はこの図を避けたのかもしれません。
局面図2
先の局面図から数手進みました。白1のノビがまた冷静ですね。黒2切りは許しても、白3からの出切りを打てれば十分、というわけです。黒6と切った方をカカえて、黒10までのワカレはさて、どうか。黒は下辺と左辺の両方を打ち、白は隅にしっかり実利を確保した。まあ、いい勝負なのでしょうね。
変化図2
前図の白1で、本図の白1とブツかって行きたくなるところなのですが、この場合は不可。黒2から4の出切りがきます。白も負けじ(?)と白5から出切るよりありません。白7から11カカエは、黒aに逃げられてこのシチョウが成立しない。白7で9から切れば、黒b、白7、黒c、白8、黒dまで、これは黒の厚みが勝ります。
局面図3
中盤に入り、ここまでのところは白がわずかに地合でリード。依田さん自身、「悪くはないと思っていた」そうです。わたしもしいていえば白持ちでしたが、続く一連の黒の構想には感心しました。
黒1のマゲがなんともメイエンさんらしい。右辺への展開よりも、右上白にプレッシャーをかけることを選択したんですね。大場の手止まりのような白2には黒3ボウシから9まで、あっというまに下辺からの模様を完成させました。こうなっては黒がおもしろい形勢でしょう。黒9がなんともいい着点ですね、メイエンさん独特の感覚です。
変化図3
実戦のような進行を防ぐためにも、前図の白2では本図の白1から下辺を消してしまうほうが良かったかもしれない。黒6までヘコませてから白7に回れば、白は地合のリードを主張できました。メイエンさんも「この進行がイヤだった」と局後に言っていましたね。
そもそも、下辺は黒がそれほど厚い格好ではなかったんですよ。図の白1や白6の急所が見えていますから、本来ならあまり黒地が見込めないはずだったんです。
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